抵抗
ああ、時はなんて無情なのだろう。
止まることを知らない流れのなかで、オレは溺れてしまいそうだ。
雄大な流れは速すぎも遅すぎもしないが、抗うことを許しもせず、ただ押し流し、ただ呑みこんで行く。
……このままで、いられたら。
やわらかい温もりと、心地よい安穏の世界のなかに……。
この手をわずかでも伸ばした途端、冷え切った現実に震えるなどオレはごめんだ。
いっそ、このまま融けてしまえたら。
おお、時よ。
オレのことなど、忘れ去ってしまえ。
そうだ、時よ。
これ以上かまわずに、放っておいてくれないか。
なあ、聞こえているのだろう……。
頼むから、応えてくれよ。
……そうか、そうなのだな。
分かったよ……。
大きなうねりが押し寄せてくる。
いいや、これは時が選び出した口やかましき使者の、しびれを切らした足音か。
「こらっ、寒いからっていつまで布団に潜り込んでいるの。早くしないと、学校に遅刻するよ」
「う~ん、あと五分……」
ああ、時はなんて無情なのだろう。