限定モノ
彼女は、限定と名のつくモノが好きだ。
アクセサリーはシリアルナンバー入りのモノを身につけ、ちょっと見ではどこがどう違うのか判別しがたいショップ限定のブーツで足元をきめ、服は今年の初めに行列してまで手に入れた限定モノの福袋より選び出された品々を身に着けていた。
彼女いわく、
「限定モノってさあ、数に限りがあるからこそ価値があるのよね」
だ、そうである。
そして、いま……。
限定二十杯の味自慢特製とんこつラーメンを食しようと、開店一時間四十五分前から順番にして八番目に俺は並んでいる。
「なんか、ワクワクするよね」
七番目に陣取った彼女の瞳は、屈託のない輝きを放っていた。
「ほんと、限定モノに目がないよな」
「うん」
「……あっ、でも俺ってさあ、この世で俺一人しか存在していない訳だから、これって究極の限定モノってことになるよな」
「ええ~、なに言ってんの? 限定モノってさあ、みんなが欲しがるのに手に入りにくいから、価値があっていいんじゃない」
彼女の瞳には、相変わらず屈託がなかった。
味自慢特製とんこつラーメン……、俺にはもう、どんな味自慢をされているのかすら、分かりっこないだろう。