とも
「……で?」
「…………」
「他にもあるんだろ、はなしたいこと」
「……やっぱり、わかる?」
「そんな暗い顔してりゃ、おれでもな」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「……笑わないでよ」
「うわっはははははは」
「あっ、こんなところに木の棒が」
「はぐっ」
「…………」
「……すまん、冗談だって」
「…………」
「悪かったよ」
「…………」
「なあ、はなしてくれって、友達だろ?」
「…………」
「ほらほら」
「うん。あの……会話がね、出来るようになったんだ」
「……ふうん、そうか。で、誰と?」
「…………」
「…………」
「鳥たち」
「…………」
「…………」
「鳥……たちか」
「うん」
「それで、家の人には?」
「いってない。心配させたくないし」
「でも、一緒に暮らしてるんだから」
「…………」
「…………」
「もしもお父さんやお母さんがぼくにもいたら、こんなことで悩まずにすむのかな」
「それは……どうだろうな」
「…………」
「…………」
「これから、どうなっちゃうんだろう」
「…………」
「やっぱりへんだよね、ぼく?」
「おれには、わからないよ。お前がへんかどうかなんて、考えたこともなかったから」
「でも嫌じゃない? ぼく普通じゃないし」
「別にいいじゃないか、それはそれで。たとえお前が牛や馬や猫や猿や熊やその他諸々のやつと会話できるようになったって、おれは嫌じゃないぜ。なんだか楽しそうだしな」
「…………」
「…………」
「…………」
「おいおい、泣くなよ。らしくないぜ。」
「……ごめん」
「…………」
「なんだかお兄ちゃんみたいで、つい」
「なにっ、おれがか? 冗談じゃない、やめてくれ。なんだか蚤やダニにでもくわれたみたく、そこらじゅうがむずむずしてくるぜ」
「じゃあ掻いてあげるよ」
「よせって」
「いいじゃん、いいじゃん」
「よせよせよせ」
「それそれそれそれ」
「うぐぐぐぐ」
「あははははは」
「いぎゃああああああ」
「あははははははは」
「…………」
「……ふう、久しぶりに笑ったら、お腹がすいてきちゃったよ」
「そうか、それはなによりだ。それじゃあ日も暮れ始めたし、お互い家に帰るとするか」
「そうだね」
「…………」
「…………」
「じゃあな」
「じゃあね……お兄ちゃん」
「だから、それは勘弁してくれって。まったく息が詰まるぜ。それに考えてもみろよ」
「なにを?」
「お兄さんてのは、お前の先を歩くもんだろ」
「うん」
「ほらみろ、そぐわないじゃないか。いいか、忘れないでくれよな。おれはお前の後ろを走りまわるのがなによりも大好きな、犬だぜ」
「うん、そうか。でも、ありがとう」
「気にするな、いいってことよ」
「それじゃあ、またね」
「それじゃあまたな、桃太郎」