長生きの秘訣
梅蔵が振り上げた杖は、憤りに猛る血潮を押さえこむように、小刻みに震えながら地に下ろされた。
「……ぐむ、むむむむむ」
相対していた梅蔵の宿敵ともいえる鉄次郎は、からからと大いに笑い、その場を立ち去ってしまった。
「これまで長い間待ちに待ち、大願を成就せんと耐え忍んできたというに……つれない奴め」
梅蔵の脳裏には鉄次郎の残した言葉が、こだまとなって響き渡っていた。
「幼少の頃にもいったがの、わしに喧嘩を売ろうなぞ百年早いんじゃ、梅蔵よ」
百七歳の梅蔵の眼前に、再度、長く険しい道のりが開かれた。