ハイヒール

          ハイヒール
250_25_syo2.png


「ちょっとあなた、なにやってんのよ」
「見ればわかるだろ」
「そりゃあ、わかるわよ」
「おまえも、大変なんだなあと思ってさ」
「なにがよ」
「ハイヒールなんてものを履いてだな、仕事してるのが」
「うん。それで?」
「おまえの苦労を味わおうとする、まあ、優しさだな」
「だからって、どうして部屋のなかであなたが履いてるのよ」
「いやしかし、ほんと、たいしたもんだ。こんな不安定なもので、よく歩きまわれるよな。感心するね。俺なんかほら、まっすぐ立つのもやっとだ」
「慣れよ、慣れ。それに、不安定そうに見えて安定してるものなのよ、わりとね」
「こわくないのか」
「あら、ばかみたいにどっしり安定してそうでいて、じつはふらふら不安定だったってほうが、ずっとこわいわよ」
「なんだよ、それ」
「ねえ、あなた」
「うん?」
「レイナっておんな、いったいどこのだれなのよ」